2015年の6月ごろ、印刷所に頼んで初めて小説の同人誌を出しました。
それまでは、右も左もわかっていない10年近く前にコピー本を作った程度だったので、
印刷所に出すからにはきちんとした装丁にしないと手にとってくれた人に申し訳ないなと思い、いろいろ試行錯誤することに。
その際に使ったソフトと3冊の本を今から紹介していこうと思います。
作成に使用したソフトはInDesign
今回の本は、AdobeのInDesignを使って作りました。
お高くはありますが、冊子を作る人の間では定番のソフトです。
私のところでは合同誌作成用に導入したものでした。
大学に居たころ、ポートフォリオ作る授業で一度しか使わなかったのでなじみがない&なんか操作難しいというイメージしかなかったですが、
少し慣れてくれば連番PDFを深く考えずに簡単に作成できて非常に便利です。
(イラストレーターのアートボード複数枚で管理してた時は白目むいてた)
「見開きページ管理をしようとすると断ち切りがつけられない」という致命的な欠陥はありますけども、
小説の入稿だと断ち切りなしでもOKのとこも結構あるので、何とかなりそうです。
なにより50ページを超えるファイルの管理がしやすいのがたまらなくイイ。
ちなみに、InDesignで冊子を作る方法は、『IllustratorとPhotoshopとInDesignをまるごと使えるようになりたいという欲ばりな人のための本』がコンパクトにまとめていて使いやすかったです。
こちらの本は小説本というよりイラスト多めな小冊子系に向いた本なので、今回は説明を省きます。
まさに教科書『文字の組み方ルールブック タテ組編』
こちらの本はtogetterのまとめ「崎谷はるひ先生の御友人による「小説同人誌の版下レイアウト講座」」内にコメントを入れてらっしゃる@Josui_Doさんが紹介していた本です。
主な用途は「小説の書き方(見た目)」の学習。
文頭は一字下げる、ルビはこうやって振る、などの「書く段階から意識しておいたほうがいいこと」が詰まってます。
長らくウェブで書いているだけだったので、どうしても小説の「見た目的作法」のことを
あまりよく知らないまま来てしまった私にはちょうど良かったです。
発行元も日本エディタースクールとなっており、基礎の基礎、教科書的な本です。
ほかにも文字サイズによる比較、章トビラやノンブル位置の例なども掲載されていて、
作業がInDesignに移った後も少し使いました。
途中編集関係の専門用語なども出てきたので100%理解するには至っていないのですが、
ほぼ必ず横に実例が載せてあるので、用語が分からなくても役立てることは可能です。
なんといっても本書の魅力は安いこと。わずか500円ちょろっとです。
ウェブで書いてたけどそろそろ小説本出してみようかなという方は
持っておくとかなり参考になるのではないでしょうか。
他にも、「ヨコ組み編」「原稿編集ルールブック」などシリーズ本もあります。
NG集と改善例に優れる思考の基礎本『伝わるデザインの基本 よい資料を作るためのレイアウトのルール』
お次はこちらの本。
理系研究者のスライドやプレゼン・研究発表ポスター制作向けに発行された本です。
小説とは直接の関係は薄いですが、
「文字を中心にした制作物における見やすさのルール」の解説が充実しているので
上記の文字の組み方ルールブックと併せて使っていました。
最大の特徴は、「失敗事例とその改善例が豊富に掲載されている」こと。
この手の本ってどうしても「こうするがよいぞ!フハハ!」みたいな格好のいい完成形だけ載せていて、
「じゃあ自力でそういう整ったデザイン作るにはどうしたらいいんだよ!」ってところが抜け落ちている、いわゆる「かっこいいデザインとそのメイキング集めました」なまとめ本も多いです。
その点、この本は失敗に対する改善例が一目でわかるようになっているので、失敗してもその後の修正が早い。
作ったものの違和感を発見する基準としても役立ちますしね。
さすが理系の人向けに作っているだけあって、
「論理的に見やすいデザインをするための考え方」を教える本といった印象。
私のような「なんとなくではイイ感じのデザインを作れないタイプの人」にはとても合う本です。
※増補改訂3版が出ました!
InDesign持ちなら買って損なし、文章系の作例豊富な『マネするだけでエディトリアルデザインが上手くなるはじめてのレイアウト』
最後は身も蓋もないタイトルの一冊をご紹介。
いやほんとこれ、真似するだけで綺麗にできるんですよ。
本書はInDesignを使う前提で書かれているのですが、
(文字サイズの単位がQ表記だったりとかで)
A5、文庫、雑誌など、各サイズの作例が豊富に掲載されています。
何よりすごいのは四方の余白(マージン)や字送りなどの細かい数値がちゃんと書いてあること!
二段組み三段組みの場合や目次・奥付ページの数値も載せてあったりします。便利。
ウェブでも「個人的 「皆さんのA5本小説設定を教えてください」まとめ」等で仕様を公開している方はおられますが、文字数行数しか書いてなかったり、現物サンプルがないのでなかなかうまく使いこなせていなかったんですよね。
(好みの問題もあると思いますが)
1ページあたりの文字数の参考にした講座
実際に本を作ったときには、上記の本以外にも以下の講座を参考にさせてもらいました。
ヒナタさんという方がpixivで公開してらっしゃる『【小説用】A5・A6の文字組みサンプル』という講座です。文字サイズ・文字数・行数・段数・行間の各パラメータと、1ページあたりの文字数のサンプル集です。(リンク切れ)
画面上ではありますが、どの設定にするとどのぐらい画面が詰まってorスカスカに見えるのかが一目瞭然なお役立ち講座です。
利用した印刷所と帯について
この本を刷るときに利用した印刷所は、「ちょ古っ都製本工房」さんです。
格安ながら印刷もきれいで、紙もいくつか選べます。
また、文庫・新書サイズが通常で刷れるのも魅力。
少部数で小説本を刷るには非常に適した印刷所です。
今回は、文庫サイズで印刷をお願いし、自宅プリンタで帯をつけました。
帯の付け方は以下の記事を参考にしました。
使用した用紙は100円ショップで売っていた光沢紙薄手。
紙厚は0.15mmです。
だいたい同じぐらいの厚みの紙であれば、市販の文庫本っぽい帯に仕上がります。
上記の記事の方はA4一枚で4つの帯を取れるようにしてありますが、
手先が器用でない私はA4一枚で3つにして、逆に裁断用のトンボをきっちりつけました。