最近はLGBT研修、なんて言葉も聞かれるようになってきたものの、まだまだ日本ではセクシュアルマイノリティへの理解が進んでいるとは言い難い。
特に、性別に関しては「男女」にパッキリと分けられてしまうため、
自分の性別に違和感があったり、Xジェンダーを自認していると悩む場面も多いと思う。
そんな時、相談できる場所があればいいのだが、
当事者以外に相談しても意外とわかってもらえないことも多いし、下手をすると逆効果になる慰め方をされたりする。
筆者もいちXジェンダーの当事者として、様々な悩む場面にぶち当たってきた。
今回は、そんな時にどう思考を変えたら気をそらせたり楽になったかをまとめてみようと思う。
以下、嫌になる場面の具体例ごとにみていくとしよう。
【社会のルール系】
・「女性(男性)なのだからこうすべき」
はっきり言って、受け取る側が苦痛を感じているならこれはセクハラだ。
性別によってこうすべき…という見識が形成されてきた社会背景があるのは理解できるものの、極論を言ってしまえばそれはその相手の価値観でしかない。
ので、対策としては「ああそう、あんたの中ではそうなのね。自分は違うけどな」と思うこと。
シスジェンダー(性自認と身体性別が一致している人)を逆差別するとか、よほど人としてまずいことをしていない限り、身体性別を理由に糾弾されるいわれはない。
・「化粧/スーツ/スカートはマナー」
これも苦痛を感じる人が多い事柄と思う。実際筆者もかなり苦しまされているし、現実的な解決策はまだ取れていない。
思考の変え方としては、「それを守らなくても、普通に生きていける」例を見たり聞いたりすることが効果的。
いわゆるスーツを日本で着るようになりだしたのなんてとても歴史が浅いし、室町くらいまで遡れば一般市民の着物なんて男女差が殆どなかったと言われている。
世界に目をむければ、第三の性別が存在する部族があったりもする。(このあたりの話は、牧村朝子著『百合のリアル』に詳しいので興味のある人はぜひ)
だから、別に今あるマナーが絶対だ、守れない自分はおかしいのだ、なんて思う必要はない。
フォーマルな場に自分らしくきちんとした姿で出たいというところさえ間違えなければ、本来は何もおかしくないはずなのだ。
【あなたはまだ若いから系】
・「年取れば変わるって!」
性自認と性的指向を履き違えている例その1である。
中高生ならともかく、20歳以上の成人に向かってそりゃないだろうと突っ込みたくなる。
というか、中高生だって真面目に話してこんなことを言われたら心に傷が残る。
・「私/俺も若いころはそういう時あったわ~」
性自認と性的指向を履き違えている例その2である。
若かろうが若くなかろうが、これを言われて「真剣に私のこと考えてくれてる!」とは思わないだろう。
(まあ、ろくに考えもせず発言しているからこういう言葉が飛び出すんだろうけれど)
・「いい男/女に出会えてないだけだよ!」
性自認と性的指向を履き違えている例その3である。
カミングアウトしないまでも「そういう話(結婚とか恋人まだかとか)は興味ないので…」と伝えても起こる。
おせっかいなオバサry…中年女性や親に多い。
これらの「あなたはまだ若いから~」系のことを言われたら「あーはいはい、ソウデスネー」くらいに流しておこう。
その人にわざわざ相談したのに言われた場合、相手は相談対象として向いていなかったということだ。
彼らの頭には「性自認が典型的な男女と違う人が居る」ということ自体が理解できていないので、いくら説明しても無駄だ。
説明に苦慮して疲れてしまうくらいなら、使えないアドバイスは馬耳東風しつつ鼻でもほじっておこう。
そして、傷ついたことをセクマイ用のアカウントとかで思いっきり愚痴ろう。
その際は、鍵を掛けることをお忘れなく。
【同調圧力系】
・「これ可愛いよね!」
・「やっぱ男は○○だよなー」
いや知らんがな。と言いたくなる一言。
「あなたも同じ性別ならこの感覚わかるでしょ???」という圧力を感じる場面は、案外多い。
暗黙の了解を求められて「意味わからん」となるのは筆者に発達障害の傾向もあるからかもしれないが。
以上、それぞれに対する対策を見てきた。
とにかく、全般に対して言えるのは
「まとも聞き入れようとするとこちらだけが損する」
「彼らには違う性別観の人がいると全く念頭にない」ということ。
だから、彼らのたわごとが始まったら「オッ、また出たぞー」と、野良ポケモンにでも遭遇したかのような気持ちでいよう。
そして心にシルバースプレーでも撒いておこう。
(ポケモンに馴染みのない方のために説明すると、
シルバースプレーとは虫よけスプレーの高品質なアイテムである。草むらで野良ポケモンに遭遇しにくくなる)
シルバースプレーでお祓いしたら、話をわかってくれる人のところへ逃げるか、趣味をするか、それをする気力もないならふて寝したり暖かい風呂に入ろう。
わかって貰える人はちゃんといるが、わかってくれない人にわかってもらおうとするのは元気のある人や活動家の皆さんに任せておけば良いのである。
元気になったら自分がそちら側に回るという選択肢もあるのだから、まずはとにかく傷ついてしまった自分を大事にしてほしい。
それに加えてもう一つ、
世の中の性別にかかわる発言にすべて頭のなかで「生物学的」とプラスして考えるというのもおすすめだ。
付け焼き刃的な対策だが、これは悪意のない相手の発言(親や友人など)に揺らいでダメージを受けることを軽減できる効果がある。
まだまだ性別二元論の意識が強い日本で、
性別違和感を抱えて生きるのはなかなかに大変だ。
でもそれは性別違和感を抱えている人が悪いからでは決してない。
少しでも上で挙げたような例が減ってくれることを切に願ってやまない。
◆Xジェンダーや男女について考えた記事たち
Xジェンダーが思う入れ物としての体の認識-所属感がないという所属