
主人公は武田家!だけど…?
皆様ご存じのとおり、本作「風林火山」の主人公は武田信玄の軍師「山本勘助」ですが、 どうも最後まで見ても影が薄い…気がしてならない…んですよね…謙信ですら欠点を描かれたというのに…完璧君主扱いの氏康の扱いの良さ
で。 信玄が出てくるということは、今川義元・北条氏康と結んだ「甲相駿三国同盟」などの話も出てくるわけです。 それ以前にも、信玄の父・信虎の時代に北条とはドンパチしていますしね。 (戦国大戦や信長の野望でもイベントのあった「河東一乱」) なので今川・北条もけっこうガッツリ出演していたわけなんですが、 この中でなぜか「氏康くんだけがめちゃめちゃ持ち上げられまくりで描かれている」んですよ。 (正確には、「持ち上げられている」というより「落とされる要素が極端に少なかった」という実態ですが) 氏康好きの色眼鏡であることはご承知おきいただきたく思いますが、それを差っ引いて見たとしても、露骨だと思うんです。 義元は桶狭間の戦いで死ぬときに「勘助にハメられて死んだ」ことを演出するためか、出来る男だけど「激昂しやすく高慢」な性格として描かれていました。 (実際の義元はかなり冷静な人だったという話もあります→「今川義元が苛立った珍しい書状」) [blogcard url=”http://rek.jp/?p=5977″]今川義元という人物は、感情を殆ど表わさない。これは、彼の文書を網羅して読んできて判ったことだ。他の大名だと文面にもう少し癖が出てくる。誠実さお人好しぶりが如実に出ている今川氏真や、かっとなって威圧的な文面を頻発させる北条氏康、それと似ているけれどもう少し皮肉っぽい上杉輝虎、心配性で愚痴っぽい武田晴信などなど。彼らと比べると、義元には本当に通り一遍の文面が多い。 (「歴探」様 該当記事より引用)…かっとなると威圧的な氏康くんとか皮肉屋謙信とか「お母さんかな?」な信玄とかめちゃくちゃ萌えますがそれは置いておいて。 信玄のライバル・謙信も最初こそ「神に身をささげたチート天才」扱いだったものの、家臣団との衝突・勘助との高野山での再会で「戦には強いけど我儘育ちの電波なケツの青い坊ちゃん」というキャラ付けを加えられ、最終的には「信玄と向いている方向が違うだけで己の我を通したい「戦国大名」であることに変わりはなくない?」という感じになっていました。 が、ですよ。 北条家に目を向けてみると、欠点らしい欠点が殆ど要素として付加されていなかったんですよ。 河越夜戦で城を囲まれたことも「囲まれた」としか言われていないですし、 関東管領の上杉憲政が城を追われて「助けて謙信マーン><」してきた時も、「北条は我が物顔で関東を~」「よっしゃ退治します!」とか言われている割に「我が物顔で侵略しまくる様子」とかは全く出てこないので、「これ憲政の被害妄想じゃね」感がすごかった。 (今川家とかは、三河も尾張もぶんどるぜ!と義元本人が言っているので) 氏康本人が登場するシーンも、
・勘助が士官を求めてくるが「今のお前は迷いがあるから修行してこい」とさわやかに送り出す
・ほぼ初登場に近いシーンですでに「自分は臆病者だから守るものがしっかりわかっている」的なことを言う大人ぶり
・援軍としてやってきた勘助を昔馴染みかのように歓待
(あちこちで罵声を浴びせられまくっている勘助に対し声を荒げることすらせず終始いい顔)
・内通者をあえて懐柔し密偵として使う懐の広さ&頭脳
・憲政の嫡子、龍若丸に恥をかかせることなく名誉の死を与え、彼を売った配下たちにも制裁を加える君主としての厳しさも見せる
(余談ですが風林火山の氏康くんは龍若丸と屋敷の濡れ縁前で太刀打ちし合ったときに顔に傷を負っています=氏康傷か)
・謙信の小田原包囲をしのぎ切った後の酒宴で「我が家の唯一の救いは一族の仲が良いこと」「それだけが救い」などと発言
…となんだかやたら格好いい&イメージ向上につながるものばかり。
第二の主人公である信玄もここまで格好良くは描かれていなかった気がしますよ…?
一体どれだけ氏康くんを持ち上げたら気が済むんでしょうか。