戦国大戦のシャクシャインのイラストの元ネタを調べてみた

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この記事の最終更新日は【2019年5月4日】です。

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「戦国大戦1477-1615日ノ本一統への軍記」で追加になった新カード、他家東「シャクシャイン」。

北海道の東方に位置するアイヌ民族の集団「メナシクル」の首長で、教科書でも有名な「シャクシャインの戦い」を率いた人物です。
年代的にまさか来るとはおもっていなかった地元武将(?)で見た目も渋かっこいいおじさんだったので、すっかり気に入ってしまい、せっかくならとカードイラストの元ネタを調べてみました。

なお、調べた内容についてはあくまで筆者が邪推したものです。
公式発表や絵師さんによる解説ではありませんのでご注意ください。

(3/1追記)着ているもの・手前にいる男女と少年は誰か? 情報追加

(2/25追記)年齢について を追記

(2/24追記)余談:兵種がなぜ弓か? を追加

容姿

シャクシャインが首長をしていた「メナシクル」本拠地「シブチャリ」のあった「真歌公園」(新ひだか町静内)に、シャクシャインの銅像が立っています。

(↑銅像のある真歌公園の位置)

銅像の近くには、シャクシャインの記念館や民俗資料館もあります。

参考画像を貼りたかったのですが、素材がなかったので詳しくは以下wikipediaの画像をご覧ください。
[blogcard url=”https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%82%AF%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%82%A4%E3%83%B3″]

銅像のシャクシャインは、豊かで長い髭を蓄えた精悍な壮年といった雰囲気。
イラストもおおむね同じようなイメージですので、この銅像を参考にしている可能性は高いと思われます。

↓銅像の顔部分がわかりやすい写真をのせているブログ記事。
[blogcard url=”http://hidaka-king.seesaa.net/article/390365668.html″]

また、シャクシャインの戦いについての軍記である「松前蝦夷軍記」に、シャクシャインの容姿について以下のような記述があります。

目なし曲(メナシクル)の大将しやむしや犬(シャクシャイン)と云者有しか、
身の丈七尺に余り、髪はたけとひとし、ほう髭胸にも身にも尽有。
眼は星の如く通力を得て偏に鬼形にことならす。比類なき曲者也。

(『北方史史料集成 第四巻』P278下段、カッコ内は記事用に注釈を入れたものです)

「松前蝦夷軍記」が収録されている『北方史史料集成 (第4巻)』によると、この軍記は記述が事実とかけ離れていて信憑性に欠けるということですが、カードイラストではこちらのわかりやすいイメージを作れる記述を参考にしたのではないでしょうか。

他の軍記では、「座したまま動かず指示を飛ばすシャクシャイン」のような描写もあり、シャクシャインの3Dモデルが騎馬ではなく輿が使用されているのはこちらを意識したものかと思われます。

手に持っている木の杖

容姿のところでも述べた銅像が、イラストとよく似た木の杖を右手に持ち掲げています。
おそらくこれを参考にしたものと思われます。

着ているもの

カードイラストのシャクシャインが着ているものですが、おそらくアイヌ民族の衣装の上に陣羽織を羽織っているのだと思われます。

taisenshakshayn01

下に着ている民族衣装の様式まではイラストでは袖口の模様が刺繍なのかどうかちょっとよく分からず特定できませんでした。
見分けがつく方がいたらぜひ教えて下さい。

また、結び目などは見えないものの、ふくらはぎにおそらく脚絆を巻いていると推測されます。
足元はごく普通の草履のようです。

胸元の飾りとズボンと肩部分の飾りのようなもの、頭のお面(?)についてはネタの出処が残念ながら分かりませんでした。
単に創作要素なだけかもしれません。
こちらも分かる方がいたらぜひ情報をいただければと思います。

一般的なアイヌ民族の服装や小物・装具類については以下の講座漫画を参考にしました。
非常に分かりやすいです。

小物解説の方では木の杖も登場します。割と一般的な持ち物だったのだろうか。

(3/1追記)
上記講座の作者、赤崎いくやさんより「一番下のは手甲ではなく蝦夷錦の可能性もあるのでは?」との情報を頂きました。
引用許可を頂けましたので、以下に一連のツイートを記載しておきます。


特に最後のツイートで添付していただいた画像での蝦夷錦と手甲(テクンペ)の比較は非常にわかりやすいのでぜひ確認してみてください。
[blogcard url=”http://photozou.jp/photo/show/555237/233781278″]

手前にいる男女と少年は誰か?

シャクシャインの周辺人物からの推測ですが、シャクシャインの足の間にいる少年は彼の三男で蜂起する際に情報伝達役を担ったという「カンリリカ」、手前の女性はシャクシャインの娘で和人に嫁いだ「リカセ」の可能性が推測できます。
また、女性の奥にいる青年は、次男の「シュモッシュン」あるいは、リカセの夫で金掘(鷹待(たかまち)とも)「越後庄太夫」のどちらかではないかと思われます。

(3/1追記)
青年の顔を拡大してみたところ、髭の生え方がシャクシャインと似ていることから息子(=シュモッシュンか)ではないか?という指摘を大戦仲間の友人から頂きました。
以下に比較用拡大画像を掲載しておきます。

taisenshakshayn02

年齢について

カードイラストのシャクシャインの年齢は、中年~初老くらいに見えます。
シャクシャインの戦いが起きた1669年当時、シャクシャインは64歳前後だったと言われているため、カードイラストはそれよりも若い頃のイメージであると推測できます。
称号部分に「東蝦夷首長」とあることから少なくともメナシクル首長に就任後と考えると、ハエのオニビシとの戦いで前首長・カモクタインが戦死した後にあたることから、1653年春前後ではないかと思われます。
1653年ごろのシャクシャインの年齢はおよそ48歳前後ですので、イラストの年齢ともおおむね合致します。

余談:兵種がなぜ弓か?

シャクシャインの兵種がなぜ弓かということですが、これも単にイメージでつけられたものではなく、元ネタと思われる背景がありました。
じつはシャクシャインの戦いの際、鉄砲を装備していた松前藩の武士にたいして、アイヌは毒矢で応戦したという記録が残っているそうです。
(文献記述については見かけ次第追記します)

このため、兵種が弓となったと推測されます。

また、特技の「疾駆」は、アイヌの弓が本州の武士が使う弓に比べ、小ぶりであったことが関係しているのではと思われます。
(小ぶり=身軽、動きやすい、といったイメージ)

アイヌが使用していた毒矢にはトリカブトの毒が塗られていたと言われ、元来矢に毒を塗る習慣がなかった武士たちは、これの対応に苦慮したようです。
アイヌの毒矢に対抗しようとした松前藩の丈長の鎧は、北海道立博物館のシャクシャインの戦い特集コーナーで見ることができます。

taisenshakshayn03

北海道立博物館の公式サイトはこちら

この記事の参考文献・サイト

記事を作るにあたって調べるのに使用した本やサイトを以下にリンクしておきます。
[blogcard url=”http://dic.pixiv.net/a/%E6%88%A6%E8%AD%9A%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%82%AF%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%82%A4%E3%83%B3″]

シャクシャインの戦いをテーマにした非常にわかりやすく面白い、赤崎いくやさんの創作漫画です。
史実ではどういう感じだったのかを掴むのに大変参考にさせて頂きました。
解説ページも情報豊富で、こちらを読めば「どんな人物で当時の周辺事情がどんなだったか」だいたいわかります。オススメです。

上記の赤崎さんのサイトで参考文献として紹介されていた本。
発行は1996と古めですが、教科書的説明には出ていない戦いの裏事情などもわかるので、より突っ込んでシャクシャインについて知りたい人は一読をオススメします。

・『アイヌ史を見つめて』に収録されているシャクシャイン関連のトピックス

「シャクシャインとオニビシの政治勢力」
シャクシャインが首長を務めていたメナシクルと、対立していたオニビシ率いるハエクルの領域および人口についての検討。
両者の紛争がどういうきっかけで起きたか、どう広がっていったかの検証。

「シャクシャインの蜂起とその背景」
シャクシャインの戦いが実は道東地域の過激派武装アイヌによる襲撃や移住に関係しているという検証論。
人口が多くなり豊かになっていた日高地方に砂金掘りがやってきて政治勢力として台頭したこと、
松前藩が交易ではなく取れる物資を自分たちで独占しようとしたことが蜂起の背景にあったとしている。
一連の争いが一般的によく言われている、日本人VSアイヌという簡単な構図ではなかったことがよくわかる。

「シャクシャイン一代記」
シャクシャイン個人の性質にスポットをあてた解説。

「アイヌ史概観-アイヌ期後期」
松前藩や他の道内各地など周辺地域との関わりの中でシャクシャインの戦いがどういう位置づけであったかを解説。

容姿の元ネタと思われる「松前蝦夷軍記」が掲載されており、『アイヌ史を見つめて』で根拠として利用されていた史料も収録されている史料集。
松前・津軽藩関係の手紙だけでなく、江戸時代以降の軍記なども掲載されています。

兵種の検証で言及した、アイヌが矢毒に用いたトリカブトに特化した本。
着眼点がユニークな一冊。

まとめてみて思ったこと

シャクシャインについては、以前まとめた新カード「尚円王」に比べると、セリフは従来からのイメージに基づいたぼんやりとしたものが多く史実ネタはあまり拾えませんでした。
ゲームセリフではあまり史実ネタがなく気になって『アイヌ史を見つめて』を読んだところ、教科書とのイメージの差に驚きました。
カリスマはあるのだろうけどなんだかすごい荒くれ者かつしたたかで、でもどこか抜けてる色々大味なおじさんだなぁというイメージに。

↓琉球の王様・尚円王のイラスト・セリフ元ネタまとめ記事はこちら。
[blogcard url=”https://sengokulife.com/taisenshoen/″]

◆戦国大戦の公式サイトはこちら

もし「これはこういう元ネタじゃないか?」という情報をお持ちの方がいればぜひコメントをお寄せください。

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