野放図な自由の世界と聖域(アジール)と土地所有権の成熟-「日本中世の自由と平等」受講ノート Week3


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以前紹介した、オンライン講義サイト「gacco」の講座「日本中世の自由と平等」を受講した際のノート代わりのまとめです。

3週目の受講ノートです。
荘園制について非常にわかりやすい説明が聞けて助かりました。

前回の分。

前回までのおさらい、歴史学の基本スタンスと実情

歴史学=科学。
科学である以上、立証には証拠を必要とする。(古文書・古記録)
しかし、古文書に書いてあることは往々にして「~すべきこと」(当為)であることが多く、
必ずしも実情を示しているとは限らない。
同時代の史料だからといって、無批判に「事実である」とは言えないのである。

男衾三郎絵詞に見る、暴力が日常の世界

男衾=埼玉の地名

(↑現在の埼玉県にある男衾駅の位置)

男衾三郎=武蔵国でも1,2位を争う、有力武士。

男衾三郎絵詞では、彼の屋敷の外を通る人々の姿が描かれている。
(鎌倉時代後期の成立とされる)

絵の中では、家の前を通っただけで、なんの罪も犯していない乞食や修行者が、男衾三郎の家来たちによって鏑矢を射たれている。
(当たるともちろん痛いではすまない)
しかも、添えられた文章によれば「生首」にするためにこれらの行為は行われている。
同様の例は「太平記」の「結城宗広」の行為にも見られ、彼はなんと「生首を見ないとぼーっとしてしまう」というだけの理由で毎日2,3人を殺して生首を持ってこさせていたというから驚きである。
結城宗広は、木っ端武士などではなく大名クラスのきちんとした身分の者である。

また、鎌倉幕府の副総理とも言える「北条重時」が家訓に「どんなに腹がたっても人を殺してはいけない」と書き残すほど、当時は人を殺すことは一般的な行為であった。(禁止する重時は逆に「情深い」という評価を受ける)

武士は治安維持の側面を担いながらも、こういった残虐な面を持ち合わせる存在だった。

中世の「自由」の意味と聖域(アジール)の消失

網野善彦は「中世は自由であった」と主張。(『無縁・公界・楽』)
ここでいう自由とは、「無主(むしゅ)」であるということ。
無主とは、「主がいない」「支配されていない」状態を指す。

こういった空間のことを、「アジール」と呼ぶ。
日本語に当てはめるなら「聖域」「自由領域」が近い。
中世には、こういう場所が数多く存在し、宗教と結びつくことも多かった。
原始の我々が形成したコミュニティも、アジールと呼べるものである。

網野善彦は「中世はアジールの第二段階である」とも主張している。
戦国大名は、アジールの第三段階に該当する。
戦国時代に、大名たちが領土を拡大・天下統一が進むにつれアジールは消失していった。

本郷先生は「網野善彦の言う「自由」とは「野放図な自由」のことだ」と説明する。
(現代人が考えるような)社会的モラルを持った平和的な自由さはなく、そこには「人を殺す自由」さえある。

江戸時代に人口が増加した理由は「自由」ではなく「平和」がもたらされたから

日本の人口が劇的に増加したのは江戸時代になってからのことである。
網野善彦の言う「自由」は「強い人達の自由」だったため、弱い人々は時に「自らの身体」や「命」をも奪われる運命にあった。
(奴隷の売買や、殺人の常態化)

江戸時代になり、制限がありながらも「平和」がもたらされると、人口は増加していった。

封建制の仕組み

封建制は「主人→家来」という構造の主従制のピラミッドからなる。
(頂点にいるのは将軍)
両者は双務的な契約関係である。
主に軍事で奉公し、その恩に「土地」で報いた。
江戸時代になると「契約」よりも「命がけの奉公」の色が濃くなるが、中世の頃は「あくまで契約関係」であり、己が評価されない場合は家来が主を見限ることもあった。

主が家来に土地を与える以下2例が紹介された。
・土地そのものすべてを与える(豊臣秀吉→浅野長政の例)
・土地に付随している何かの権利を与えるだけ(源頼朝→島津忠政の例)

荘園制の仕組み

荘園制のなかでは、国の領土は荘園と公領(こうりょう)に分かれる。
公領も、国が所有する荘園なので、実質的には全て荘園である。
1町は約1ヘクタール。

荘園の支配機構は上から「本家(天皇家・摂関家・大寺社)→領家(一般貴族・並の寺社)→下司(げす・武士などの在地領主)」となっており、京と在地領主のパイプ役に「預所(あずかりどころ)」という役人が派遣され、農園経営指導などをしていた。
預所以外は世襲制。

公領では本家の箇所が「朝廷」になり、その下に「国司(県知事)→在庁官人」と続く。
パイプ役は「目代」と呼ばれた。

下司・在庁官人の武士たちが、鎌倉時代に御家人となると彼らは「地頭」と呼ばれるようになっていく。

荘園には「真の所有者がいない」?

荘園は本家が真の所有者と思われがちだが、実際には「所有者」はいない。
「職(しき)」と呼ばれる税金・石高などの権利をおのおの配分しあっている縦の関係にすぎない。
=「分有(ぶんゆう)」している状態。

在地領主たちは、開拓する際には国衙に許可をもらうものの、耕した土地を公領にされてしまわないために国司よりも上位の貴族に「京へ納税すること」などを条件に保護を求め、自らの土地を守った。

闕所地給与の法則

「闕所地(けっしょち)給与の法則」とは、過去なんらかの理由で土地を没収された者がその後その土地が空白(=闕所地)となった時に、優先的にその土地を与えてもらっている事例が多いことから付いた名前。
没収された本人ではなく、親族などでも優先権があったようである。

御成敗式目第八条にみえる「当知行」20年ルール

鎌倉幕府が出した憲法とも言える、御成敗式目の第八条には「当知行」に関する規定が定めてある。
「20年間当知行の状態にあった土地は「理非を論ぜず」にする」というもの。
つまり、法的に全く根拠の無い占拠であろうが、20年間支配を続けてしまえばその土地が自分のものとなり、他人が文句を言う権利を失うという内容である。

中世という時代は「土地の所有権の成熟過程」だった

中世社会では、「誰も土地を持っていない」が「みんなが少しずつ持っている」状態。
鎌倉時代~戦国時代の間に、「所有権」の成熟がすすみ、「完全なる所有者」が生まれることになった。
(島津忠政は「地頭権利」しかもらえなかったが、浅野長政は「甲斐国」そのものを所有できた)
中世初期に非常にあやふやであった「公権力」が力をつけ、「不当な支配」を排除することができるようになったからである。

つまり、中世というのは「所有概念が成熟していく過程」にある時代だったと言える。

花押について

武士の自筆書状はなかなか残っていない場合も多いが、花押だけは必ず本人が書いている。

↑次週の分はこちら。

◆「日本中世の自由と平等」受講ノート

第一回 歴史学とはなにか、武士とはなにか

第二回 くじ引き将軍義教の改革と実効支配(当知行)の世界

第三回 野放図な自由の世界と聖域(アジール)と土地所有権の成熟

第四回 戦国大名は領土拡大を必ずしも望んでいなかった?

 

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