戦国女性や庶民の描き方までわかる『戦国ファッション図鑑 イラストで解説する戦国時代スタイリング』

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戦国ファッション図鑑

2016年2月10日に発売になりAmazonでもベストセラー1位を獲得した『戦国ファッション図鑑 イラストで解説する戦国時代スタイリング』。
巷に戦国系のイラスト描き方解説本はいくつも出版されていますが、割高めでもおすすめの書籍だったので以下レビュー記事をまとめておきます。

どういう本?

・現代風戦国イラストを描きたい人向けのビジュアル資料本
・武士の甲冑、正装、平服から女性や庶民まで幅広く「衣装」を取り扱う

戦国の代表格とも言える武士のみならず、一般的な戦国系イラスト技法書ではなかなか取り上げられない「女性や庶民」の描き方まで言及している珍しい本です。

女性といっても武家の姫君にとどまらず、一般の女性や特定の漂泊民についても描かれているので、幅広い作品制作で参考にすることができます。

個人的には、室町時代後期の女性と安土桃山時代の女性を分けてカウントして項目を作ってあったのが好評価でした。
(戦国時代といっても前半と後半ではかなり文化や雰囲気も異なってきますので…)

冒頭のQ&Aコーナーでは、戦国時代と服に関する気になる質問への回答もあり、まさにかゆいところに手が届くといった印象。

旗印・馬印の違いなど、ワンポイント解説も充実しています。

なんと甲冑の毛引き縅(けびきおどし)と素懸縅(すがけおどし)の違いなんていうマニアックな解説も…

武士については、定番の甲冑姿は胴丸・腹巻・当世具足の三種。
足軽の姿や旗指物・陣中道具の解説もあります。

平服・礼服は直垂・大紋・素襖・肩衣・胴服・狩装束・束帯・少年・傾奇者を取り上げています。

マントや南蛮胴については別途「南蛮文化」として章が設けられており、
少ないながら、子供について触れている箇所もあります。

若干気になるところがあるとすれば、本自体が少々値段の割に薄いところ。
とはいえ、7割ほどがフルカラーページですし、
安易に「戦国ブームだしとりあえずそれっぽい技法書を出しておけば売れるだろう」的な作りではありません。

前述のとおり、女性や庶民の描き方についても知りたいけど、専門書に手を出すほどでは…という人にはぴったりな作りです。

B5サイズと少々大きく場所は取りますが、その分大きい図で確認ができて便利です。
また、分厚くないことで逆に作業スペースが狭い環境でも置いておきやすいという利点もあります。

どんな人向け?

・創作戦国ジャンルで作品を作っている人
(特にストーリー漫画や長編小説を描いている人)
・作品の「その時代っぽさ」「生活感」を出したい人
・戦国時代が出てくるTRPGなどをプレイしていて、ロールプレイに深みをもたせたい人

ということで、創作戦国というジャンルで活動している人であれば間違いなく活用できる一冊です。
また、戦国系ゲームの二次創作で活動していて、「描写に厚みを持たせたいなー」と思っている人にも役立ちます。

私的には、以前紹介した『和装の描き方』とこの『戦国ファッション図鑑』で、衣装関係のイラスト入門書はほとんど事足りるのではないかなと思っています。

pixivの講座ですが、こちらの「戦国男子服装事情」もかなり突っ込んで詳しく解説が行われており、オススメ。

戦国武家男子服装事情 by さくら on pixiv

創作で使うことを前提に作られている講座なので実践的ですし、
きっちり参考文献も示されているので、さらに深く調べたい時にも便利です。

創作への活用方法

イラスト・漫画で活用

本書のイラストは現代風で線がシンプルで描き込みすぎていないため、どのような絵柄の人でも活用しやすいです。
カラーページも多いので、カラーイラストを描く際の影の付け方の資料としても使えます。

何度も繰り返しますが、最大の特徴はなんといっても女性と庶民に関するページ。
いざ戦国ものを描こう!と思っても「モブキャラってどう描いたらいいんだ!?」と詰まることってありますよね。
本書はそういう時、辞書的に使えて大変便利です。

履物や小物・荷物の運び方などの図解もあるので、細かい所の表現に詰まった時にとても役立ちます。

小説書きにも役立つ

「図鑑」というくらいなので、メインの用途はイラスト・漫画制作向けなのですが、小説を書く上でも本書は役立ちます。
イラスト図解に添えられた解説やコラム欄に、どういった用途で使われたかなどのシチュエーション的な部分の説明がきっちり付いているので、小説において生活感を出したい時に便利です。

付録も充実

本書は服装の描き方本ですが、付録も充実しています。

ひとつ目は巻末の戦国史年表。

こちらは、大きな戦の年号をひと目で見ることができ便利。

もう一つの付録が、伊賀袴の作り方。

残念ながら型紙が付いているわけではなく参考の図が掲載されているだけですが、本書には伊賀袴の作り方が載っています。


実は過去の人気本。ようやくリニューアル発売

発売以来好評なようですが、実はこちらの書籍、まったくの新規出版書籍というわけではありません。
以前、マーブルブックスというところから2009年に出版された『戦国ファッション絵巻―戦国の魅力、いにしえのファッションで徹底解説!』という本のリニューアル版のような本なのです。

この『戦国ファッション絵巻―戦国の魅力、いにしえのファッションで徹底解説!』、
女性や庶民の描き方にも言及している数少ないライト層向けの入門衣装資料本として人気でした。
事実、私も「戦国女性の描き方の資料でなにかいいのないですか?」と聞いたらこちらの本をおすすめされたことがあります。

しかし、残念ながら早い段階で絶版になってしまっていたようで、Amazonやオークション等でも価格が高騰。
せどりで儲けたい人の狙うべきお宝本に数えられている始末…
さすがに定価1900円前後の本を5000円で買うのもなぁ…と思い、長らくスルーし続けていました。

また、エンタメ系の色が強いことから公共図書館にも蔵書がないことが多く…
といった理由で筆者も「読みたいけど読めてない、できれば欲しい本」の一つでした。

それがこの度、リットーミュージックによって再出版という運びとなったようです。
いやありがたい。

類似のおすすめ書籍

・和風系全般の衣装と仕組みを知るなら、以前も紹介した『和装の描き方』
本当におすすめです!戦国系衣装についての言及は少ないですが、和服の仕組みから知りたい人はぜひ!

・戦国武将に特化したイラスト技法書をお探しなら『萌える戦国武将の描き方』
タイトルで敬遠するなかれ。コンパクトにまとまっていて意外と便利です。

・より専門的&軍事方面をお求めの場合は『戦国武器甲冑事典』
絵柄が劇画リアル調で好みが分かれますが、こちらも定番。