Xジェンダーらしさ=その人らしさ。服装や一人称は無理に変えなくていい。オタク上等。

同性パートナー・ジェンダー///
Xジェンダーでも服装や一人称は無理に変えなくていい

LGBTへの理解が叫ばれてしばらくが経つ。
自治体の同性パートナーシップ宣誓書の導入の動きも進んでいく中、
同じセクシュアルマイノリティといってもヒエラルキーのような物を感じることが増えてきたように思う。

いわゆる、「キラキラマイノリティ」とそうでない人の差だ。
(キラキラした要素=セクシュアリティをオープンにしている、
周りから認めてもらえている、パートナーがいる、おしゃれや芸能人・スポーツや美容が好き…などなど)

ところで、LGBTの中のTの辺縁に位置するXジェンダーは、
男女どちらにも性自認の居場所を見いだせない人が自称していることが多い。
筆者もその1人だ。

しかしながら、男女のどちらにも当てはまらない(あるいは両方当てはまる)と言っても、
大抵のXジェンダーは身体上典型的な男女のどちらかに当てはまるため、
男・女という要素から完全に隔絶して生きることは難しい。

このXジェンダーの中にも当然「キラキラ」している人と、そうでない人に分かれるわけだが、
キラキラしようとは思っていないタイプの人が自分はXジェンダーなのかも?と思い始めてすぐにキラキラした事例を見たら、打ちのめされてしまう可能性がある。
特に10代などのまだ若い人は、「その集団の中でも目立つタイプ」をステレオタイプとして捉えて自分と比較してしまいがちだ。

今回は、「自分はメンズ(レディース)服に興味がないし、
一人称も容姿も普通だからXジェンダーじゃないのか…?」と悩む、
「泥臭く」「埋没して」「非モテな」Xジェンダー(とその予備軍)向けに、
似たような鈍くさくイカしてないいわゆる「古いタイプのオタク」な当事者の筆者を引き合いに、
「大丈夫、こんなやつもいるぞ」という例をまとめておく。

つい何かと目立ちがちなキラキラしている人に目を焼かれずに、「自分はこれでいいのかもしれない」と思って貰えたら幸いだ。

※埋没:もともとはFTMやMTFの人たちが使っていた用語。
出生時の性別を明かさずに、トランスジェンダーでない人の中に埋没して生活すること。
ここでは、単に「男女どちらかに紛れて目立たずに生活すること」の意味で使っている。

埋没系のXジェンダーよ、「勘違いかも?」なんて嘆かなくていい。私達はたしかに存在する

試しにTwitterや検索エンジンで「Xジェンダー」と検索してみよう。

筆者が学生の頃よりもはるかに多い量で、FTXやMTXの人の例などがたくさん出てくる。
いい時代になったものだ。

もちろん、メンタルに不調を抱えた人も多いけれど、
アイコンが自分の写真だったり、自撮りを載せていたりして、
自信をもって生き生きとした日々を過ごしている人も少なくないようだ。
セクシュアルマイノリティやLGBTのイベント(プライドパレードや講演会等)に積極的に参加したり、
自ら情報を発信したりしている人もいる。

でも待って欲しい。
そんな風に自分をさらけ出せるタイプではないXジェンダーは存在しないのか?

そんなことはない。
もしあなたが、そういう風に自己開示や自己顕示をするのが苦手なタイプだったとしても、
それがイコール「Xジェンダーでない」ことにはつながらない。
安心してほしい。

Xジェンダーだから、全員がキラキラしていなければいけないわけではない。
ましてや、一生ずっとXジェンダーを名乗っていなければいけないわけでもない。
長い人生の中で、性自認が揺らぐことはありえることだ。
ツイッターやウェブでXジェンダーを名乗っている人多くの人がしていることをしていないとXジェンダーと認めてもらえないわけではない。

名乗らなければXジェンダーとはわからないほどに埋没していようが、
トイレは身体上の性別を使うのに違和感が無かろうが、
身体上の異性装をするのに興味がなかろうが、
パートナーを作ることよりも二次元が好きだろうが、
それでもあなたがあなたをXジェンダーだとしっくりくるのなら、あなたはXジェンダーなのだ。

異性装をすることや一人称を異性風にする人が偉く見えてしまう理由

Xジェンダーの中でも、(身体上の)異性装をしている人や一人称を異性風にする人は、
同じセクシュアリティの人の中でなんだか「偉く(≒自己肯定感が高そう)」見えることがある。
これまたFTXを例にすると、メンズ服を貫いていたり、一人称が「俺」「僕」だったりする人などである。
(MTXの人は逆に読み替えるとわかりやすいかと思う)

筆者だけではないと信じたいが、こういう人を前にするとなんだか気遅れしそうで、
セクシュアリティが同じ人の集まりなどを見かけても参加するのに抵抗があったりしないだろうか?

先程も書いたが、これらができる人=偉いわけではない。
容姿を特に身体上の異性に近づけるでもなく、
ただただ「そのままでいる」ことが自分で一番しっくりくるのであれば、
それがその人の「その人らしさ=Xジェンダーらしさ」なのだ。

そもそもなぜこういう風に、Xジェンダーは自由度の広い概念にもかかわらず、
狭義のトランスジェンダーのように振る舞うことが「偉い」ように見えてしまうのか?

それは、日本はまだ根強く男女二元論が蔓延っているのと、
「男装」「女装」というファッションジャンルが存在するためではないだろうか。

男女二元論とXジェンダーは非常に相性が悪い。
「男なら~~~が普通」「女なら~~~が普通」といった圧力は、自分の性別に違和感のない人であっても苦しいものである。
ましてや、その枠に入れない我々にとっては、「どうやっても無理なもの」なわけで、
「できるならとっくにやってるわい!」と叫びたくなった経験はないだろうか?

日本にいるのなら典型的な男女どちらかの枠にハマったままで居るのが楽に決まっている。
好きで枠を外れたわけではないのだ。

話を戻そう。
究極のところ、ファッションとしての身体上異性装(メンズ・レディース服やメイク等)が落ち着くのなら、その人はそうすればいい。
けれど、Xジェンダーかもしれないと思っている人の全員がそうしなければいけないわけではない。

思っているより、世の中には「ファッションも含め、自分を着飾ることに興味のある人」は多いが、そうでない人も確実に存在する。

もしあなたがそういった物に興味がないけれど、
もしかしてXジェンダーかも?と悩んでいたのだとしたら、
筆者は胸を張って言いたい。

別に無理してメンズ(レディース)服を着なくても、一人称を俺(私)にしなくても、咎められる必要はない。

どこを埋没させてどこを尖らせるかは、その人の好きにしていい

散々「埋没」や「非モテ」を名乗ってきてあれだが、
筆者はちゃんと埋没できているタイプとは言い難い。

化粧は生理的嫌悪感があって無理だし、パートナーシップについても人並み以上に欲求がある。
つまり、その部分で言えば、ちょっと尖っていて目立つので、
他人から見れば「なんだ結局キラキラじゃねえかよ」と見えなくもない。

ただ、自分にとってそれが自然というだけだ。
その他の部分、たとえば、服は最低限機能性のあるものでいいと思っていたり、
髪もある程度量があるのでぱっと見は普通の女性に見えるだとか、
一人称は別に「私」で違和感がないとか、
そういった部分は「一般の女性」に埋没している。

だから、あなたにもあなたなりの埋没度合い・尖り度合いがきっとある。
同じ悩む時間でも、キラキラしているXジェンダーになれないことを悩むより、自分の特徴を見つける方に悩んで欲しい。

つまりは表題の通り、あなたにとってそれが自然と感じるのなら、
無理に「世間のXジェンダーが皆やってるっぽい風」に合わせる必要なんて微塵もないのだ。

昔風の根暗でコミュ障なオタクのXジェンダーが居たって、それはまったく自然なことなのである。

著:LabelX, 編集:LabelX
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