テーブルトーク・ロールプレイングゲーム(TRPG)ってご存知でしょうか?
ニコニコ動画等で流行したこともあり、言葉だけは聞いたことがある方も多いかもしれません。
テーブルトークRPG、あるいはテーブルトーク・ロールプレイングゲーム(テーブルトーク role-playing game、略称はTRPG)とは、テーブルゲームのジャンルのひとつ。
ゲーム機などのコンピュータを使わずに、紙や鉛筆、サイコロなどの道具を用いて、人間同士の会話とルールブックに記載されたルールに従って遊ぶ“対話型”のロールプレイングゲーム(RPG)を指す言葉である[1]。 Wikipedia
同好の士が角突き合わせてアナログな手法で遊ぶ、RPGの源流と言ってもいいでしょう。
デジタルゲーム(テレビゲーム)がゲームの主流となってもなお根強い人気がある反面、初心者的にはなんだか独特の敷居の高さがあります。
たとえば…
「興味はあるんだけど敷居が高そう」
「何を準備したらいいの?」
「遊ぶ相手がいないし…」
「調べても専門用語ばっかりでさっぱりわからん!」
とか。
実際、私もこの壁に阻まれて、プレイしたことがない人間の一人でした。
そんななか先日、幸運にもTRPGプレイヤーのコミュニティとつながる機会があり、「一日で遊べる簡単なのもあるよ」とのことだったので実際に体験してみることに。
今回はそれをもとに、
「デジタルゲームとの違いや面白さのポイント」
を重点的にまとめました。
ボードゲームやトランプの類は家族で遊んだことがある程度。
TRPGの知識はほぼ皆無。
クトゥルフ神話がベースの「CoC」と呼ばれるルールに基づいた、
1日で遊べるシナリオ。
廃病院で失踪した女の子を探し出して救助するという内容。
難易度は簡単に作ってあり初心者でもクリアしやすい。
音頭を取ってくれたTRPGコミュニティの知人が自作したもの。
TRPGとは?何をするゲームなの?
ルールブックに基づきキャラを作成し、シナリオに沿ってサイコロを振りプレイする
ルールブックはデジタルゲームでいうシリーズのようなもの。
ドラクエシリーズ、FFシリーズとか、無双シリーズみたいな。
世界観のベースにもなっていて、商業ベースの歴史の長いものから同人作品まで、数もたくさん。
これがないと基本的には遊べません。
カードゲームのスターターデッキ、デジタルゲームにおけるカセットやDVD-ROMのような存在です。
↑こういう本です。
本のサイズはゲームに酔ってまちまちですが、大抵分厚いです。
電子書籍版が発売されているゲームもあります。
そして、ルールブックをもとに構築されたシナリオを、ゲームマスターと呼ばれる人が進行役としてプレイしていきます。
「宝箱を開けるか?」「手当をするか?」などの選択肢に対して、成功や失敗、ダメージ量などをサイコロを振って数字で判定を下し、シナリオの最終目的達成を目指すのがTRPGの基本的な流れです。
「ルールブック」=ゲーム本体
「シナリオ」=章、エピソード、第XX巻
のように理解しています。
必須ではないが、ロールプレイをすると楽しい
シナリオの進行中に、自分が操作しているキャラクターが言いそうなセリフや、動作を盛り込んだ発言をすると大変盛り上がります。
通常、デジタルゲームではこのあたりの自由度が低いことが多いですが、TRPGはプレイヤーの手に委ねられているところが面白いです。
プレイヤーはまったく行動しないという訳にはいかないので、プレイ中になんらかのアクションをすることになるわけですが、
その際にロールプレイを行うと楽しいですよ。
慣れていないとちょっと気恥ずかしいですが!w
プレイ時間はどれくらいかかる?
TRPGは全部アナログということで、プレイ時間も複雑で長いものになるというイメージを抱きがちですよね?
事実、私もやってみるまではそういうものだと思っていましたし、やったことがあるという家族に聞いてみても、1日では終わらなかったと言っていました。
しかし、今回プレイした「一日卓」と呼ばれる短いセッションでは、キャラクター作成に2時間くらい、シナリオ開始が21時、シナリオ終了が0時でした。
なんと総計:5時間です。
正味のプレイ時間は3時間くらいなので、意外と短いです。
このような半日ほどで遊べるシナリオを選べば、あまり長い時間を取れない人でも十分遊べることが分かっていただけると思います。
TRPGはどうやって遊ぶの?
遊びたいシナリオを決める
どんなシナリオで遊びたいかを決めます。
剣と魔法の王道ファンタジーの世界や、ホラー(クトゥルフ神話など)、和風時代劇ものなど、いろいろなジャンルがあります。
人を集める
昔ながらのオフラインで遊ぶにしろ、オンラインで遊ぶにしろ、TRPGで遊ぶ場合は2人以上の人を集める必要があります。
(中には一人で遊べるシナリオもあるらしいですがここでは割愛します)
うち1人はゲームマスター(GM)やゲームキーパー(KP)と呼ばれるゲームの進行役をします。
のこりはプレイヤー(PL)です。
プレイする場所を決める
オフラインで遊ぶか、オンラインで遊ぶかを決めます。
「サイコロとか振るゲームなのにオンラインでできるの?」と疑問に思われたかもしれません。
いくつか方法はあるようですが、現在では便利なTRPG向けのサービスもあり、テキストチャットやボイスチャットを活用することで、オンライン上でも不都合なく遊べるようになっています。
(オンラインセッション=オンセ と呼ばれる)
私も今回遊ばせてもらい、初めて知りました。
今回は、「どどんとふ」というサーバーに設置するタイプのTRPGオンラインセッションのためのシステムを活用して遊びました。
BGMが流れたり立ち絵が出せる機能がついてるので臨場感もたっぷりです。
あらかじめサーバー設置されているのを利用すれば無料で遊べます。
オフラインで遊ぶ場合は誰かの自宅でもいいですし、
最近だとホビーショップ等にプレイエリアが併設されていてそこを借りるパターンもあるようです。
「セッション」「卓」と呼びます。
この記事はオンラインセッションを基準に書いています。
※AdobeのFlashがブラウザで非対応になる影響で、上記で紹介したどどんとふは2020年内には使えなくなります。
後継のオンラインセッションのシステムとしては「TRPGスタジオ」、「ユドナリウム」、「コリドーン」等があります。
それぞれUIや搭載している機能が異なるため、ルールブックによって遊ぶシステムを変えるのが主流になっていくかもしれません。
TRPGをプレイするのに必要なものは?
TRPGをプレイするのに必要なものは、
・プレイ人数(2人以上)
・(オンラインの場合)ネット環境
・(オフラインの場合)サイコロやステータス管理の記入シート
などです。
基本的には、ルールブックやサイコロの購入等で準備にお金がかかることはあっても、プレイするの自体にお金はかからないです。
無料で遊べるのは経済的ですね。
ルールブックは必要?
今回は知り合い3名のみ&チュートリアルのような形で、必要な情報を随時教えてもらいながらプレイしている形式でしたので使いませんでした。
このように、はじめてのプレイで経験者の知り合いにガイドしてもらえるのならば必ずしも必須ではありません。
ただ、身内数人で遊ぶのでなく、見知らぬ人と遊ぶ場合は絶対に必要になります。
理由については、「TRPG ルールブック 必要」などで検索すると、先人の方たちが丁寧に解説してくれていますので、
ここでは簡単に引用するにとどめて詳細は割愛します。
なぜルルブが必要なのでしょうか。
クトゥルフ神話TRPG初心者へ送る投げやりな解説(ページ消失につきリンク解除)
このTRPGのルールブックというものは、
実は「参加者全員が共通の認識を持ってゲームをプレイする」のに必要なのです。
KPは良く読み込んでルルブの通りにゲームを進めるでしょうが、
PLが誰一人としてルルブに書いてある常識を知らないと、
いちいち説明しなければならないので進行が滞りますし、
ゲームの攻略法をKPが説明しなければならないというのは面白みに欠けます。
ゲームの流れ
キャラ作成
まずはじめにそのシナリオで使うキャラクターを作ります。
パラメーターの設定方法はルールブックやシナリオによって異なります。
今回の「廃病棟に棲むモノ」は、「クトゥルフ神話TRPG」というルールに基づいているため、サイコロを振って決める形式でした。
私は進行役のゲームマスターに助けてもらいながら、1~2時間くらいかけて作りました。
シナリオによっては前に作ったキャラクターをそのまま使う場合もあるようです。
私は「病院の売店員 25才の外国人男性」というキャラクターを作りました。
もう一人のプレイヤーは「小児科の医師のおっさん 35才男性」を作成。
この他に、NPCとして「刑事」と「失踪した女の子」をゲームマスターが操作しています。
HP(体力)やSTR(腕力)POW(精神力)やEDU(教育)などのパラメータ、
および職業やスキル(特殊技能)の得意度(パーセンテージ)が割り振られています。
キャラクター作成を行う際には、
- クトゥルフWEBダイス(クトゥルフ神話TRPG特化のランダムダイスツール)
- キャラクター保管所|クトゥルフ PC作成ツール(作ったキャラクターのパラメータ管理ツール)
のような便利サイトを使うとスムーズに作れます。
シナリオ説明
いわゆる導入です。ゲームマスターがシナリオのあらすじと、目的についてプレイヤーに伝えてくれます。
いざプレイ!
シナリオ説明の後、実際のプレイが進行していきます。
「XXしてもいい?」「このキャラはXXについてどこまで知っている?」など、ゲームマスターと確認しあってすり合わせを行うことがデジタルゲームとの違いです。
持ち物や情報の確認も一つ一つ行っていくので、気になる人はメモをとっておくと便利かもしれません。
要所要所でサイコロを振り、スキルの発動の成功失敗を決めたりしていきます。
サイコロを振るタイミングはゲームマスターから指示されます。
サイコロの振り方は「1d100」というような表記で示され、この場合は「100面体ダイスを1回振る」という意味です。
振った目によって成功失敗などが決められていて、「1D100<=80」と書かれている場合、80未満の目が出たら成功、80以上が出たら失敗という意味です。
ともあれ、オンラインセッションなど電子計算が使える場合は、パソコン側が成功失敗を自動的に導き出してくれるので、いちいち計算しなくていいので、心配しなくても大丈夫。
その後、廃病棟での探索に移り、女の子を探して周囲に手がかりがないか手分けして見回ったり… といった感じで進行していきます。
シナリオのクリア
クリア目的のあるシナリオでは、目的が達成されたらセッションが完了します。
一度のプレイで完了しない長いものは、日をまたいで開催され、それがクリアまで続きます。
女の子を安全なところへ送り届けたらシナリオクリア。
今回のプレイは怪しいものには触らないようにして少女の救出を優先したことと、
サイコロの出目が良かったので危うげないクリアとなりました。
シナリオクリア後、軽く感想などを雑談して解散します。
TRPGの面白さとは?
参加者全員でシナリオを作り進行させていく楽しさ
デジタルゲームと一番差があるところです。
TRPGでは大筋の流れはあるとしても流れは決まりきっていないので、どんな結末になるかはゲームマスターにすらわかりません。
デジタルゲームでは「ようこそ!はじまりの村へ!」としか言わない村人Aにすら、中の人がいて、コミュニケーションを図れる…
そう思うと、なんだか面白いと思いませんか?
周囲のプレイヤーと協調して謎解きや行動を選択していくこの手探り感は、デジタルのゲームではなかなか味わえません。
自由度の高さ
楽しみ方を自分たちでいくらでも自由に工夫できるところがとにかく楽しい!
ロールプレイをすれば没入感が爆上がりです。
デジタルゲームではやらせてもらえないような行動もゲームマスターや他のプレイヤーが認める限り、自由自在です。
コマや立ち絵、マップシート、BGMなども、凝ろうとおもえばいくらでも凝れるので、デジタルゲームでも世界観にドップリ浸かりたいような、凝り性なタイプのゲーム好きにはたまりません。
ライブ感と先が読めないワクワク
プレイする前、TRPGはキャラクターを動かしたり、ロールプレイを行えるという特性があるので、
小説とかを書いたりするのに近いのかな?と思っていました。
ですが、実際には小説を書くことよりも、音楽アーティストのライブに近いように感じています。
その場にいる人と、その時にしかできない体験を共有する。
体験をより楽しむために、ロールプレイやアドリブをしてみる。
(アーティストのライブでもアドリブとか、時にはみんなで歌ったりしますよね)
どうです?似ていませんか?
小説を書くことは基本一人でやりますし、完成してから人に見せるため、静的です。
一方、TRPGのセッションは、他のプレイヤーの反応やサイコロの目次第でいくらでも変化していくため、流動的です。
先が読めない面白さとワクワク感があります。
この独特のライブ感が、デジタルゲームや小説・漫画制作などの一人で行う創作活動にはない魅力と言えます。
TRPGを遊んで感じたデジタルゲームとの差
時間がかかる
ルール把握や進行など、初心者の間はとにかく「どうしていいかわからない場面」が多く、説明してもらったりするので時間がかかります。
また、慣れてきたとしても人とコミュニケーションをとりながら進めていくので、どうしてもデジタルゲームに比べると時間はかかりますし、好きなタイミングでやめたり始めたりの融通もききにくい特徴があります。
時には、一つのゲームが終わるのに年単位かかることもあるそうです。
この間、友人が2年掛かったシナリオがようやく完結したと言っていました。すげえな…
一人で熱中して遊ぶのには向いてない
ゲームマスターや他のプレイヤーは当然ながら人なので、
デジタルゲームのNPCのようにプログラム通りに動いてくれるわけではありません。
ときには「●●さん、これについてはどうしますか?」と判断を求められることもありますし、基本的には何をするにしても皆と相談しながら進めていく必要があります。
なので、「俺はシナリオの進行とかどうでもいいんだ!!!ひたすらこのスライムを倒し続けるんだ!!!」みたいな遊び方はできません。
…たぶん。
そういうのがしたい場合は、デジタルゲームのが向いてると思います。
想像力を駆使したり他者に配慮する必要がある
自分でキャラクターのロールプレイを考えるだけの想像力がない人、逆に自分のロールプレイや設定を他人に捻じ曲げられたくない人には少し辛い遊びかもしれません。
また、疲れていて想像力が働かせにくいときにも厳しいです。
ただ、想像力や他者を気遣いながら集団で遊ぶ力を鍛えるという意味では役に立つのではないかと感じました。
このあたりは、発達障害向けの療育でアナログゲームが活用されるようになってきているというのに通じるものがありますね。
ゲームでは、全てのプレイヤーが対等の関係にあります。また、プレイヤーたちは勝敗や順位を競い合うライバル同士であるのと同時に、ルールやマナーを守り合ってゲームを成立させるパートナー同士でもあります。
ルールを守り合って楽しく遊ぶ経験が、子ども同士で対等に関わる経験となり、ひいては今の社会で求められるコミュニケーション力を身につける練習となるのです。
空気が読めない…そんな子どもに試したい「アナログゲーム療育」って?(LITALICO発達NAVI)
TRPGに興味ある人が始めるまでの壁:そもそもなんでこの体験記事を書いたか
実は私はTRPGには、結構長いこと興味がありました。
ただ、興味を持ってその都度遊び方とかを検索しても、
・専門用語の多い既存プレイヤー向け記事
・用語の定義をなでたような記事
のどちらかの記事が多く、「実際にどんな遊び方をしているか」が分かりづらかったり、「何処が楽しいポイントなのか」が伝わってきにくかったんです。
仕組みは伝わるんだけど、どう入っていけば、どう楽しめばばいいのかなって。
(改めてプレイしてから読んだら、「ああ、そこはそういう意味だったのか!」と理解できたので、まとめしてくださってる先人たちにケチをつけるつもりはありません。ご容赦ください…)
TRPGの経験者は「リプレイを読めば分かる」「やってみればわかる」とおっしゃいます。
※リプレイ=プレイログを読みやすくまとめたもの
ですが、やったことがない人からしてみると、とにかく不安なんですよね。
どんなものか知らないと続けてやってみたいかどうかもわからないですし、仕組み上、全く初心者の友達同士で集まって遊ぶのでもなければ、
経験者に案内をしてもらうことになるので、いきなり本格参入するのは抵抗感があるし、「迷惑を掛けたりしないかな?」「デジタルゲームとは勝手が違うだろうし…」と尻込みをしていました。
なので、今回一日卓と呼ばれる短めでとっつきやすいシナリオから入ることができて本当に良かったです。
そして、実際に遊ばせてもらった経験(といってもまだ1回だけど)をもとに、どんな遊びをしていて、どこが楽しくて、どこがデジタルゲームと違うのかを、同じように「興味はあるけど尻込みしている層」に向けてまとめた次第です。
初めてだけどやってみたい人は、経験者の方に「一日で遊べる短めのシナリオで体験してみたい!」と伝えてみましょう。
あるいは、初心者同士で短めなシナリオを試行錯誤しながら遊んでみるのもいいかもしれません。
※筆者はプレイするまで見たことがなかったんですが、ニコニコやYoutubeなど、動画だと流れがわかりやすいです!
現状、プレイの雰囲気を知りたいなら動画が一番オススメといってもいいです。
ただし、実際のプレイを動画にし直す際に盛り上がるよう改変されている場合もあるので、あくまで参考程度に留めるのが吉。
↓実際のプレイに即した解説も書いています。