大人の発達障害者の成功例はなぜ夫婦ばかりなのか?安全基地の大事さと収入問題

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発達障害者の成功例は夫婦ばかり?

大人の発達障害者は成人の就職率が4人に1人という低い数字だとされているくらい、「普通」に生きていくのが大変だ。

実際筆者も一般就労を含めた仕事の獲得のため不本意ながら就労移行支援事業所に通っていた時期があった。

しかし、厳しい現実とはいえ、なかには自分の特性と社会をうまく折り合わせることに成功している人もいる。

そしてその成功者はなぜか妻や夫などのパートナー持ちが多いように感じたことはないだろうか?

なんで夫婦というパターンが多いのか?

発達障害を抱えている大人は、金銭的に自立できない場合筆者のように実家の親に頼るか、なんとか苦しい中で一人暮らしを強いられている人も少なくない。

そんな中、なんとか実家から自立して、なおかつ自分の身体や精神に過度な負担を掛けずに済んでいる、いわゆる成功例の人達がいる。

人生をなんとかやっていけているという成功を掴んだ人たちは、夫:定型発達で一般的な正社員、妻:発達障害でフリーランスあるいは在宅で家事、あるいは夫婦揃って発達障害を持っているが共働きという、夫婦を1単位とした例が多いように思う。

このパターンが成功を収める理由はおそらく今の日本において明確に男女格差があるため。賃金、雇用、その他の条件において、男>女となっているためだ。
(逆に、「男は正社員が普通でしょ?」プレッシャーが強すぎて、主夫がしたい人や短時間勤務がしたい人、働けない男性にとっても厳しい状況であると言える)

勢い、「なんとかやっていける例」として挙がるのは、 「法律婚の男女夫婦」という単位になれた一握りの人に限られるということになる。

この中には、何らかの理由で法律婚できない男女カップル、身体的性別が女性同士のカップルや、独身同士のルームシェアなどが入ってこない。

税制上の優遇措置や福利厚生等が法律婚夫婦に劣るためだ。

勘違いしないで欲しいが、「うまいこと異性のパートナーを見つけられた発達障害者は恵まれてていいね」という恨み言を言いたいのではない。

ただ現状で、なんとかなっている例としてそういうパターンが、肌感覚として多く散見される気がしていて、それはなぜなのか、いち当事者として純粋に興味を持ったから考察しているに過ぎない。

以下、なぜ夫婦という単位の例が「なんとかなる」くらいには成功できるのか考えていくとする。

発達障害者が生きていくには安全基地が非常に大事

パートナーがいる人というのは、それが異性愛カップルかそうでないかにかかわらず、心理的に安定する傾向にある。
その人の存在が、子供の頃に得られなかった自尊心や自己肯定感を回復したり、新しく養ったりするベースキャンプになる。

心理学の世界ではこれを安全基地という。

安全基地(あんぜんきち、英: Secure Base)とは、アメリカ合衆国の心理学者であるメアリー・エインスワースが1982年に提唱した人間の愛着行動に関する概念である。子供は親との信頼関係によって育まれる『心の安全基地』の存在によって外の世界を探索でき、戻ってきたときには喜んで迎えられると確信することで帰還することができる。現代においては子供に限らず成人においてもこの概念は適用されると考えられている[1]。

フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2017/07/25 09:55 UTC 版)

別にそれはパートナーでなくても、カウンセリングや友人など、気持ちを偽らずに話せる場所や相手であれば何でもいいのだが、とにかくそういう物と出会えるか否かが、発達障害のある人間にとっては人生の命運を分けると言っても過言ではない。
(だからこそ、いまは子供の発達障害がわかるとすぐに理解・受容・個別対応(療育というらしい)をするようになったのだろう)

安全基地の確保がされているというのが、「成功」の理由の一つであると見ていいだろう。

発達障害というだけで収入を得るのが厳しすぎやしないか?

夫婦単位で暮らしていけるようになるとなんとか生きていきやすいもう一つの理由は、この「収入」にあると思う。

そもそも、考え方や特性が大多数と違うというだけで障害扱いされ、(実際数世代前の頃までは社会的に問題にならなかったので発達障害の概念はほとんどの医師に見向きもされていなかったらしい)

命綱である収入を得ることが難しいという時点で何かおかしくはないだろうか?

発達障害に続いて一部でじわじわと話題になりつつある「敏感すぎる人たち(HSP)」についてもそうだ。
ゴミゴミしくてガサツな現代社会に適応できない人を一律に落伍者扱いして切って捨てるにしては、今の日本の「支援」はお粗末すぎる。

いわゆる「通勤」「勤務」ができないなら、いきなり自分で仕事を作り出せって、どう考えても無理ゲー。
筆者自身も、無理だろうがやらないとこの先が不安なので足掻いているものの、先行きは不透明で日々不安ばかりが募っている。

そもそも発達障害を「矯正」して定型社会に適応するのが良いことなのかは置いておいても、そういった子供の頃からの「うまい折り合い方」を学習してこれなかったいわゆる「大人の発達障害」層は、理不尽にも自力でなんとかしろと丸投げされているのが実情。

障害の程度がひどければ周囲が困るのでなんとか支援にもつながるけれど、グレーゾーンとか「傾向あり」程度の人だと無理すれば「普通の人(定型発達者)」に合わせることができてしまうところがあるので、結果的に無理をして潰れる人も少なくない。

生きていくの自体がハードモードなのに、その上収入を得るためにさらに普通の人より勉強も努力もしないといけないって一体何?罰ゲームか何か?

正直、こんな実情だと、死にたいと言われたところで誰も止める権利は無い。
それでも死ぬな、自殺は駄目だと言うのならきちんと「死にたいと思わなくてもよくなる生活ができるような支援」を整備して欲しいと切に願う。

現状の支援って言ったって、以下のようなもんですからね。
支援っていうか単に矯正ですよこれ…

発達障害者に対する今の日本の障害福祉の支援は間違ってる。
個性を大事にすると言いながら、スタッフは利用者に、規則正しい生活リズムを身に付けさせたり、日中活動させたり、将来一人暮らししたり一般就労目指しましょうと、利用者が今まで10年以上どう頑張っても出来なかった事ばかり言ってくる。
それらを無理して1ヶ月とかの短期間ぐらい何とか出来たとしてもその後に悪化して長引くだけ。 回復するのには生活サポート受けれる実家や病院などに住み、1年間とか長い時間を過ごさないと回復しない。

当事者が書く~僕は発達障害・精神障害・引きこもり 成人発達障害者の /実態  より)

発達障害者が収入を得る方法

 メリットデメリット
 一般企業に就職する安定して高い収入が得られる(10万円~)
なんとか暮らしていける可能性が高い
障害に配慮してもらえないので負担が大きい
就職活動をしなければいけない
通勤しなければいけない
 障害者枠で就職する安定して収入が得られる
発達障害に配慮してもらえる
これだけでは暮らせないことが多い
就職活動をしなければいけない
通勤しなければいけない
 障害年金を得る安定して収入が得られる経済的に自立できない
これだけでは暮らせない
年金が降りない・停止される場合もある
 就労継続支援A型・B型に通う発達障害に配慮してもらえる工賃がとても低くこれだけでは暮らせない
(マイナスになることもある)
田舎では施設や内容の選択肢が少ない
通勤しなければいけない
 実家の家業を継ぐ収入が得られる
就職活動の必要がない
家業がない人には無理
向いていない家業だと続かないので逆効果
安定収入ではない
 主夫・主婦になってパートナーに養ってもらう就職活動の必要がない
向いていれば精神的に負担が少ない
経済的に自立できない
パートナーを持てない・持ちたくない人には無理
自分から選べる選択肢ではない(運ゲー)
 せどり・Webライター、アフィリエイト等、オンラインビジネス就労するよりも負担を減らせる
内容によっては在宅ワーク可能
安定収入ではない
暮らせるほど稼ぐには適性が必要
ビジネススキルや対人調整能力が必要
 事業を興して個人事業主になる特殊技能や資格を活かせる安定収入ではない
ビジネススキルや対人調整能力が必要

この表を見てもらえばわかると思うが、夫婦に限らず二人以上で暮らしていく場合、家計を1人だけで負担しなくていいメリットがある。
加えて法律婚の夫婦で片方が一般就労or双方が就労など、十分収入があるとなると、格段に楽になるのがわかるだろうか。

法律婚の夫婦であれば住居選択でも関係性を理由に断られることもまずない。
企業によっては扶養手当も出るだろう。
また、年金や健康保険など、多くの法律上の仕組みも法律婚夫婦であれば融通が効く場面が多い。

つまり、生きていく上でただでさえハードモードになりやすい発達障害の人生を、いくばくか軽減してくれる現実的な選択肢が、今の所「法律婚の夫婦」くらいしかないという現状をしめしている。

いま私たちができること

法律婚の男女夫婦になれる人はそれが一番手っ取り早いだろうが、この記事はそうではない人向けに書いているのでそこは除外する。

自分の安全基地をいくつか作っていく

べつに無理に恋愛をしたりパートナーを作る必要はない。
当事者会でもいいし、SNSの趣味の集まりでもいい。
とにかく「心安らかにいられる」「頭ごなしに否定されることがない」安全な帰れる巣をいくつかつくる。
成功例の夫婦たちを見ていても、「支えがあったからこそうまくやって行けている」と口々に言っている。
心の支えを持っておくのは非常に大事だ。

賃金格差のない仕事を探す(特に女性)

一般就労していた定型発達の友人から聞いた話だが、未だに民間企業では男女で賃金格差がある企業も少なくないようだ。
賃金がカットされ続け先行きが不透明ではあるものの公務員は男女とも賃金が一律だし、ネットで得られる仕事(Webライター、イラストレーター、アフィリエイト等)も男女格差がない。

法律婚夫婦以外でも生きていけるような道づくりしている人を支援する

たとえば、「同性パートナーシップ」や「選択的夫婦別姓」への署名をするなど。
法律婚の男女夫婦以外でもなんとか生きていける方法を増やすことは、時間はかかるかもしれないが確実に私達を生きやすくしてくれる。

夫婦同姓・別姓を選べる社会にするため、私たちの訴訟を応援してください!)

↑サイボウズ社長:青野さんが立ち上げた署名。ニュースや新聞などで目にした人もいると思う。

同性婚の法制化を、内閣総理大臣・法務大臣・国会に勧告してください。)

↑セクシュアルマイノリティの問題に取り組む弁護士・行政書士・司法書士・税理士・社会保険労務士などが発起人となっている同性婚に関する署名。

こういった「現実に絶望しきってしまわない」「現状を変えるために行動する」という選択肢があることを私に教えてくれたのは『百合のリアル(牧村朝子著)』という本。
一節を引用させてもらうと、こんな感じだ。

「泣かないで。時には泣くのも大事だけれど。でも、覚えておいて。泣くことで変えられるのは、自分の気分だけよ。気が済むまで泣いたなら、顔を洗っておしゃれして、ちゃんと行動すればいい。そうすれば毎日を変えられるし、泣き続けなくてもよくなるのよ。そのためにできることを、お伝えするわ」P132

(前略)『自分はこうしたい!』という声だけでなく、その要望で具体的に誰が救われるのか、どんないいことがあるのかをきちんと伝えることが大切よ。
『社会』なんていうと何か大きなもののように思えるけど、実は『あなたや私やあの人も含めた、ひとりひとりの集まり』のことなんだから」P140
百合のリアル (星海社新書)

P132

こちらは発達障害ではなくセクシュアルマイノリティの本に分類されているが、セクシュアルマイノリティの話題にとどまらず「生きづらさ」について焦点を当てている良書なのでぜひ読んで欲しい。

著:牧村朝子, イラスト:小池未樹
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ネットビジネスは収入源になるか?

ほかにもよくある手口として発達障害や生きづらい人に、ネットビジネス(多くはブログやアフィリエイト、アドセンス)で暮らしていこうよ!とオススメする人を見かけるが、はっきりいってそう簡単に暮らしていけるほどには稼げない。

それでも年単位で継続していると何もしないよりはマシ(月2000~5000円くらい)の収入には繋がったりするので、もし今無職で時間を持て余していたり、バイトに出る気力はないけど少しでもお金が欲しい場合はチャレンジしてみる価値あり。

その第一歩としては、ココナラがビジネス色薄めでやりやすい。

このサイトはクラウドソーシング(ネットで案件をとってくるサービス)なので、自分のサイトやブログなどを持っていない人でも手軽に取り組める。

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ジャンルが広いので、なにがしか自分の適性に合ったカテゴリが見つかるはずだ。
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実際に自分ココナラを使ってみたときのレポートは以下の記事でまとめています。
ココナラ出品体験談

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メンタルを病んでしまった我々のような人間が、自力で一発で社会復帰するのはなかなか至難の業。
私も初めは就労移行に相談&訓練を受けてから、生活リズムの安定やスキルアップができました。

就労移行支援は「事務系」「IT系」など内容に応じて様々な施設があります。
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