一般就労が難しい障害のある人のための福祉的就労の場として就労継続支援事業所A型というのがあります。
このA型事業所で働く場合、基本的に雇用を結び週5日通勤することになるため、最低賃金の保証がないB型作業書に比べて一般就労に近い形になります。
その分採用されるまでの手続きもやや煩雑で決まるまでけっこう手間取った印象がありました。
手続きの仕方とか、履歴書の書き方とか、細かいところををまとめている人はいましたが、探す段階から一連の流れを書いている記事が案外見当たらなかったので、事業所探しから採用に至るまでの実体験をもとにまとめておきます。
この記事はこんな人にオススメ
- 就労継続支援事業所(A型)を探している
- A型事業所の探し方が知りたい
- A型事業所の効率のいい見学の仕方が知りたい
- A型事業所の面接応募のやり方が知りたい
執筆者の環境は以下のような感じです。
- 地方の都市部在住(政令指定都市)
- パソコンが使える、得意なほう
- 逆に接客とかはぜんぜんできない
- 発達障害グレー&気分循環性障害
- A型探しをした当時は、週5勤務はできないくらいの体調だった(その後改善)
全体の流れ
初めに全体の流れを一通り箇条書きにしておきます。
- まずA型でいいのかどうかのチェック
- A型事業所探し
- 見学
- 通いたい施設の絞り込み
- 可能であれば体験
- 医師の意見書を貰う
- ハローワーク登録
- 応募書類の作成(履歴書・職務経歴書)
- 面接
- 採用決定後の手続き
- 雇用契約
見学した施設の比較&検討のための便利な表(Googleスプレッドシート)も配布しています!
「ファイル」→「コピーを作成」してお使いください!
以降は各項目ごとに解説していきます。
まずA型でいいのかどうかのチェック
最初の段階では、そもそもA型事業所に通えるだけの状態なのかどうか、通いたい気持ちはあるのかを自身で確認してください。
A型事業所は、福祉的就労ではあるものの雇用契約を結ぶことになるため、履歴書などの書類提出や面接・手続きが必要になり、一般就労とは違った面倒さが生じます。
しかも、一般就労にくらべると働く時間が短い分、それだけで暮らしていける額の賃金になることは稀です。
制度の都合上、基本的に週5日通うことになるので、それに耐えうる病状なのかどうかを見極める必要もあります。
このため、事前にメリット・デメリットを医師やカウンセラー、相談支援事業所などと一緒に確認して、「A型を選択肢に入れるかどうか」をまず決めておきます。
医師やカウンセラーは症状に対する相談に乗るのがメインなので、就労継続支援事業所についての相談は相談支援事業所にお願いするのが個人的にはおすすめです。
相談支援事業所は、地域に設置されている福祉に関する相談に乗ってくれる、行政の委託を請けた施設です。
ただし、相談支援事業所の支援内容のメインは生活に関することなので、就労関係の細かい相談はハローワークにお願いすることになります。
A型を探しつつ、同時にB型や移行、一般就労を探すのも問題ありません。
私もそうしていましたし、A型応募の前には一般のアルバイトに応募したりもしました。
(あまりに入れるシフトを少なく書きすぎたせいか容赦なく落ちましたが…)
候補になるA型事業所を探す
実際の事業所探しは、ネットで探すか、ハローワーク等で求人を見て行います。
自治体によって圏内の福祉施設の検索サイトなどを設けていることもあります。
分野によってはこの段階である程度どんな施設であるかを想像することができるため、けっこう重要です。
たとえば、TwitterやFacebookアカウントを展開している施設であれば発信内容をチェックしておくことで、「職員がどんな人か」「通っている人の情報をどれくらい外に開示しているか」「スタッフや通所者の待遇はどんな感じか」がなんとなくわかったりします。
私が見かけて「いまいちだな…」と感じたのは、以下のような事例でした。
- 事業所Twitterで「職員は金欠なので~」と呟いている
こういうところはアットホームではあるかもしれませんが、ちょっと不安になります… - そもそもウェブページがない施設、あってもおざなりな作りをしている施設
パソコン系の作業を謳っているにもかかわらずこれだと、やはり不安になります - 逆にやたらウェブページが凝りすぎている施設
開設したてで妙にサイトがおしゃれで凝っているけど、欲しい情報が全然ない、というパターンもけっこうあります
A型事業所の見学をする
ウェブサイトや求人である程度希望する施設を絞り込んだら、見学の申込みをします。
だいたいのところは求人を出している場合見学歓迎になっていると思います。
ただ、中には更新が追いついておらず見学や募集を締め切っている場合もあるので、いきなり1箇所に絞らず複数箇所見学を申し出ておくのがおすすめです。
あまりにあちこち行き過ぎても疲れ果ててしまいますので、3件ずつくらいに区切って行うのがベター。
(見学はけっこう体力・気力を使います)
見学の申し込みがしたいけれど電話がどうしても苦手な場合、相談支援事業所に予約申し込みの手伝いをお願いすることもできます。
また、一人ではうまく質問などができなさそうであれば、こちらも相談支援事業所に見学の同伴をしてもらえます。
特に、会話に詰まった時に助け舟を出してもらえる、自分以外の視点で評価が聞けるのはありがたかったです。
ただし、同伴する職員のスケジュール調整をする必要があるので、自分の希望する日程で動けないのがネックです。
見学を行うと、雰囲気もつかめますし、施設との相性もなんとなく把握できます。
第六感的な、実際に見ないとわからない部分が感じ取れるため、通いたい可能性が少しでもある施設は見学しておく事を勧めます。
通いたい施設の絞り込み
見学が終わったあとは、各施設への評価の取りまとめを行います。
あらかじめ見学に行く施設名と、チェックしたいポイントの表を作り、見学後に○や×などで評価をつけ、適宜気になった点をメモしておきました。
できれば見学に行ったその日のうちにまとめておくと忘れにくくていいです。
私の場合は以下のような項目を比較して評価しました。
- トイレが快適かどうか(お腹がゆるいので)
- 連絡方法(電話なのか、LINEなどなのか)
- 朝のラッシュに巻き込まれるかどうか
- 階段はあるか(息切れを起こすため)
- 喫煙所(タバコの煙が苦手なので規則がゆるそうだと辛い)
事業所見学の結果と比較&検討のときに使った表を配布します!
自由に印刷して使ってください!
Googleアカウントをお持ちの方は、「ファイル」→「コピーを作成」してご自身のGoogleドライブ上で使うこともできます!
(コピーしたファイルの再配布はNGです。ご紹介の際はこの記事のURLをお伝え下さい)
表をもとに相談支援事業所でどの事業所が良いかの相談をします。
私はかかりつけ医のところのカウンセラーにも事業所探しの話をしていたのでそちらでも少し相談していました。
もちろん一人で決めてもOKですが、他人に話すことで整理ができてくる部分もあるので家族等でもいいので誰かしらには一度相談する事を勧めます。
可能であれば体験をさせてもらう
A型事業所は施設によって、就労移行支援や就労継続B型を併設している場合もあります。
こういった施設の場合、A型ではないほうの施設で体験を受け付けていることがあるので、もし通いたい施設があるなら体験させてもらっておくと良いです。
私の場合も、希望分野で実務経験がなく自分の技量を測りかねていたので、併設されていた移行支援で体験させてもらったときに事情を説明してみたところ、「まずはA型を受けてみてはどうか?」とおすすめされて就労につながりました。
このため、求人票でよさそうな施設を見つけたからといっていきなり応募してしまうより、一度施設側と条件のすり合わせなどをしておくとスムーズに面接→採用の流れにつなげることができるかもしれません。
応募したい施設が決まったら、ハローワークに紹介状を貰いに行ってくださいと言われると思いますが、障害者手帳がない・出ない場合、別途やることがあるので以下に書いておきます。
医師の意見書を貰う
発達障害グレーゾーン等、障害者手帳が出ない程度の症状の場合、ハローワークに障害者枠で登録しようと思うと、「医師の意見書」が必要になります。
これがないと登録ができず、紹介状の発行もしてもらえないので、ハローワークで様式をもらって病院に行き、書いてもらってきましょう。
未確認ですが用紙はハロワに行かなくても病院に言えば用意してくれるかもしれません。
ただこの「医師の意見書」は、診断書同様にお金がかかるものなので出費には気をつけてください。
診断書等の値段は病院により異なるので事前に確認しておくと受付で焦らずに済みます。
(自分の場合は3千円くらいかかりました)
ハローワーク登録
医師の意見書(持ってる人は障害者手帳)を用意したら、最寄りのハローワークのみどりの窓口に行って登録を行います。
親切な施設であれば、応募を希望した段階で最寄りの窓口を教えてくれる場合もあります。
(すでに登録を済ませている人は読み飛ばしてください)
書面で登録用紙を書くことになりますが、希望年収や希望職種は応募したい施設が決まっている場合、ある程度アバウトでもOKです。
私の時も困って空欄で持って行ったところ、ハロワ窓口の方が代理記入してくれました。
書式記入が終わったら求人票を発行してもらいたい施設の情報を伝えます。
窓口の人が施設に電話をしたあとに紹介状を発行してくれ、紹介を受けた旨の控え、あと求人票をもらえるので、あとは自宅で履歴書や送付資料を作成します。
応募書類の作成(履歴書・職務経歴書)
紹介状を発行してもらったら、5日以内に履歴書を施設宛に送付します。
(送付先住所と宛名は紹介状発行の際に説明してもらえます)
求人によっては履歴書以外にも職務経歴書を要求されることもあるので作成します。
履歴書・職務経歴書の作成に不安がある場合はハローワークで相談に乗ってもらえるので、あらかじめいろいろ聞いておくとベスト。
私のときは「履歴書の作り方」「職務経歴書の作り方」という冊子をもらえました。
これ、履歴書の送り方の作法や経歴の少ない人向けの職務経歴書の書き方なども載っていてかなり便利なので、もらえそうならもらっておきましょう。
自分の場合、新卒就活を放棄してしまい経験がなかったので応募書類の作成はけっこう時間がかかりました。(1日半くらい)
可能なら、一度でも履歴書を出すタイプの就労をしたことがある人に見せて添削をしてもらうことをおすすめします。
(私も文面がちぐはぐで不安だったので現役の正社員やってる交際相手に添削してもらいかなり修正しました)
施設によっては障害の状況などを知りたがっているところもあるので、「私の障害について」という別添え資料を作っておくと親切かもしれません。
おおむね、障害の名前と状況・得意な業務・苦手な業務と自分でしている対策・配慮してほしいことなどをまとめておけばOKです。
書式については凸凹ナビさんのの記事を参考にしました。
・参考:障害者雇用で働くための応募書類 ~「履歴書」と「障害について」の書き方|凸凹ナビ
※サイト閉鎖されたようです。
また、私の場合障害以外にも性別違和を抱えているのでそれについてもこの書式に盛り込んでおきました。
口頭で説明するとなかなかややこしいので、LGBTQ+など、障害とは異なるが知っておいてほしい事情がある人は添えておくのをおすすめします。(オープンにしてもいい場合)
面接
書類が施設側に届くと、面接日の連絡があります。
(このあたりは施設により異なるかもしれません)
スーツでなくてもいいと言われたので私服(ユニクロ等、かなりカジュアルな格好)で行きましたが、それが理由で悪印象になるといったことはなかったように思います。
というか、面接に行った時点でほとんど採用が決まっていたらしく面接らしい面接でもなかったのであまり参考になる情報がなくすみません…
前述の見学・体験の段階で施設側から技能チェックを受けていたので、先方もこちらがどんな人間か把握できていたためあまりとやかく突っ込まれなかったのだと思います。
採用決定後の手続き
採用決定後、A型事業所の障害者サービス受給者証を持っていない場合は役所への申請が必要になります。
採用が決定したらなるべく早めに行きましょう。
一般就労と違いこの役所での手続きがあるためかなり手間に感じますが、A型はあくまで福祉的就労ですのでそこは我慢。
窓口では、以下のような事を質問されます。
- いつから通勤開始か
- 氏名、住所、生年月日、緊急連絡先、マイナンバー番号の記入
- 自分以外の緊急連絡先1人分
- 自立支援医療受給者証や障害者手帳の提示
- かかりつけ病院名と主治医の名前
- (同居者がいる場合)続柄や生年月日などの記入
- (分かる場合)世帯年収
- 採用されたA型事業所名
- 通勤日数と時間
- 今後3ヶ月、今後1年の簡単な目標と計画
とくにマイナンバー番号は要注意です。
なかなか覚えていられないですし、マイナカード・通知カードを持ち歩く人も少ないと思いますので予め用意しておきましょう。
A型事業所の契約のタイミングでも必要になります。
※ヒアリングを行える担当者が居ない場合、また後日来てくださいと言われることもあるらしいので、可能ならあらかじめ予約してから行くほうが確実かもしれません。
特に問題がなければヒアリング終了後、平日なら1週間ぐらいで受給者証が発送されます。
雇用契約
採用後、勤務開始日に雇用契約を結びます。
必要書類については採用決定時に施設側から教えてもらえると思いますが、例を示しておきます。
- 障害者サービス受給者証(A型用のやつ)
- 障害者サービス受給者証のケース(青いビニールのやつと、それに付属してくる冊子。冊子に施設がハンコを付く箇所がある)
- 自立支援医療受給者証
- お薬手帳
- マイナンバーがわかる資料(通知カード、個人番号カード、住民票など)
- 給与振込先の通帳
- 印鑑(シャチハタNG)
などが必要になります。
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[おまけ&宣伝]就労継続支援A型事業所を選ぶ際のポイントと、私自身のA型への就職活動の感想を以下のnoteでまとめています。こちらも参考にどうぞ。
・就労継続支援A型事業所を選ぶ際のポイント-「採用されるまでの流れ」の裏話|note
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メンタルを病んでしまった我々のような人間が、自力で一発で社会復帰するのはなかなか至難の業。
私も初めは就労移行に相談&訓練を受けてから、生活リズムの安定やスキルアップができました。
就労移行支援は「事務系」「IT系」など内容に応じて様々な施設があります。
迷うなら、全国に展開していてたくさんの事例を経験しているところに相談してみましょう。
相談や見学は無料なので、失うものは時間(+人によっては交通費)くらいです。
すべてが一気にバラ色に解決するわけではないけど、まずは一歩動くところから!ですよ!
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