和風・歴史系のイラストに特化した技法書「和装の描き方」が、
とんでもない当たり本だったので、感動を胸にレビュー記事をしたためておきます。
平安時代~現代の和服まで幅広い時代をカバーしており、小物や道具・武器などについての詳細な解説もある優れた一冊です。
※内容には関係ないところですが、炎上していたようです。気になる方は作者さんのTogetterまとめへ…
本の概要
あちこちで既に評判を得ていると聞く本書ですが、実際に中身を見るとその評価の良さに納得です。
これまでの和風用技法書って、写真をならべて「あとは模写してください」だったり、
サンプルイラストはあってもそれがどういう構造なのか詳しく解説したものはあまりありませんでした。
かといって歴史系の衣装の資料本を見ても、説明が細かすぎたり、写実的すぎて、
「じゃあ絵的にそれっぽく見せるにはどうすりゃいいのさ?」という部分ではイマイチ…
その点本書は、和「風」では満足できない、ちょっとコアな歴史絵を描きたい人のカユイところに手が届く本なんです。
カバーに「ヘンテコ和装なんていわせない!和装の描き方のコツがわかる!」とあるのがとても納得できる内容となっています。
では早速紹介をば。
掲載衣装のバリエーションが多い
和風と言っても浴衣しか載っていなかったり、女性ものしか載っていなかったり、現代ものしかなかったりetc…でがっかりしてた歴史好きの絵描き勢も多いと思うんです。
が、本書はそこらへんカバー力が違います。
表紙の触れ込みだけでも「普通の着物・ゆかた・狩衣・衣冠束帯・水干・十二単・遊女・忍者・新撰組…」と書いてありますが、
実際には鎌倉~室町のころの武士の正装「直垂(ひたたれ)」(大河とかで皆よく着てるやつ)についても少ないながら解説があります。
ていうか、この本読むまで狩衣の袖の紐が年齢によって幅変わるなんて知りませんでした。
名前だけは知っていた衣装についても、ちょいちょい載っている小さな解説文がかなり勉強になります。
他にも、平安初期の女官の服装や巫女の舞装束、現代の女子神職服などが取り上げられています。
動いた時の袴の状態について物凄く詳しく載っている
袴を描く人間が知りたいであろう、派手なアクションをした時の袴が「どうなるか」についてもかなり詳しく解説してあります!
どこのヒダが広がるかという仕組み自体から解説しているので、異なるポーズを描きたい時にも参考にできるのがありがたい。
このため静止した一枚絵だけでなく、戦闘シーンなどを含む漫画など、動きのある絵を描きたい場合でもかなり参考になります。
小物も勿論サンプルイラストだけでなく、構造まで掲載
そして記事タイトルにも書きましたが、本書の最大の魅力が「小物情報に優れていること」です。
歴史ドラマとか映画とか見てると大概の方は「ああそういや武家のお嬢さんとか髪になにか巻いてるよな」と気づくかと思うんですが、
あれの仕組みと描き方が詳しく載ってる本なんて初めて見ましたよ!
(元結(もとゆい)と言います)
和風では避けて通れない草鞋は結び方から紹介されていますし、
束帯姿のときに履く靴からその他時代衣装で身にまとう、一般的にはちょっとマイナーな(けど描けるとリアリティが増す)靴たちが勢ぞろい。
他にも「かんざし・扇子・和傘・煙管・刀剣・槍・忍者武器・弓・褌・うちわ」と、およそ和風・歴史もので描きたくなるだろう小物はほとんど網羅されています。凄い。
挙句の果てには烏帽子ですよ!烏帽子!えぼし!
直垂姿の武士がかぶってたりするあれ!
信長の野望・創造の北条氏康とかが被っているあれです!
さらに、束帯姿の時の「冠」の解説までついてるのでもう充実とかいうレベルじゃないですこの本。
そんなに分厚い本でもないんですけど、必要なポイントがギュッと詰め込まれてて、
正直この本に載っていないけど描きたいアイテムが出てきたらもうそれは「専門書」を読んだ方がいいレベルなのかなと。
そう思います。
教本掲載作家さんによるボツイラストまとめ
この『和装の描き方』ですが、本で資料イラストを描いている作家さんによるボツ&中身のプレビューがpixivにアップされています。
買う前の参考や購入後にこちらもあわせて補足にどうぞ。
6/26発売 玄光社「和装の描き方」の、ボツ原稿。|pixiv
おまけの関連おすすめ本
『和装の描き方』では、和服全般を扱っており戦国系の比重がそう多いわけではないので、戦国時代関係に特化した本が欲しければ『戦国ファッション図鑑』もあると便利です。
こちらの本もかなりおすすめなので、後日紹介記事を書く予定です。
→書きました
ちなみに戦国もののちょっと専門的な衣装資料のおすすめはこちらの『戦国武器甲冑事典』。
あと、文章解説になりますが『【絵解き】戦国武士たちの合戦心得』『【絵解き】雑兵足軽たちの戦い』もおすすめ。
とくに後者は陣中での食事やトイレ事情なども載っているのでストーリーづくりにもお役立ち。
どちらかというと小説書きさん向きです。
まとめ
和服のことはよく知らないけど和風・歴史系イラストや漫画を描きたい!と思ったら、
まずはこの『和装の描き方』である程度基礎固めをしてから、徐々にこれらの専門書に移っていくのがいいのかなぁと思います。
(私は最初に事典のやつを買ってしまったけど)
というわけで、いろいろ書いてきましたが、
「歴史もの描きたいんだけどとりあえずぱぱっと参考にする衣服の資料本ない?」って聞かれたら、まず間違いなくこの『和装の描き方』は必携の一冊と言えます。
以上、男女どちらの衣装を描きたい方にも向いているオールラウンダーな和風絵技法書の紹介でした!